November 25, 2022

海外で展開している日本の飲食店と円安における販売価格の変動

ここ数年、海外に出店する日本の飲食店が増えています。コロナ禍で、多少勢いは衰えたものの、海外を目指す企業が後を絶ちません。

「なぜこんなに海外進出が進んでいるのだろう?」と疑問を持った方もいるのではないでしょうか? そこで今回は「海外で展開している日本の飲食店」をテーマとして取り上げます。

飲食店が海外へ進出するメリットから、海外に出店する際に気をつけなければならないこと、成功店の事例、そしてアメリカでのインフレや円安・ドル高の影響など、幅広く説明します!

国内の伸び悩みと海外を目指す日本の飲食店業界

日本の外食産業は1990年代後半から伸び悩んでおり、すでに20年以上が経過しています。高齢化の影響で、現在はご年配の方に向けたサービスなどが新たに開発・展開されていますが、今後人口が少なくなるにつれ、国内での市場規模は急速に縮小するであろうと予測されており、各企業はその対策に追われています。 その打開策として注目されているのが海外への出店です。

2013年の12月、「和食」が「ユネスコ無形文化遺産」に登録されました。この影響もあり、日本食は海外の方から高い注目を集めています。

現に、農林水産省による「海外における日本食レストランの数」(外務省調べにより、農林水産省において推計)というレポートで、2006年に2万4千店だった日本食レストランは2021年年には15万9千店にまで増加いていることがわかっています。

海外の日本食レストランは15年で6.6倍に増えているのです。

2019年からも、コロナ禍であったにも関わらず3千店増加しており、世界で日本食のブームが起こっていることがわかります。

特に食文化の近いアジア圏での伸びは顕著で、今後も需要は増えると考えられています。この波に乗るため、さまざまな取り組みをしている日本の飲食店は多数あります。

海外で出店するメリットは?なぜ多くの企業は海外を目指すのか

海外で日本の飲食店が出店する具体的なメリットは以下の2点です。

①販路を拡大することができる

②高い日本食需要に応えることができる それぞれについて具体的に見ていきましょう。

販路を増やすことができる

前項で述べた通り、飲食店の国内での市場規模は今後減少が予測されています。コロナ禍での規制が緩和され、インバウンド需要の復活は考えられるものの、それにも限度があります。

売上を落とさないためには、シンプルに「売れる場所を増やす」ことが対策になるのです。

日本食レストランの数が急速に伸びているため、今後は早く出店することや、競合店との差異化をはかることも鍵となるでしょう。

高い日本食需要に応えることができる

こちらも前項で触れましたが、海外では現在日本食ブームが起きており、特にアジア圏での日本食レストラン増加が顕著です。

日本の飲食店はその中でも「本場の店」ですから、そこが強みとなります。このブームの波に乗ることで、海外の顧客の高いニーズに応え、売上アップが見込めます。

成功店が海外展開で気をつけたこと

海外で出店するにあたり、日本の飲食店はどんなことに気をつけるべきなのでしょうか? 成功店が気を配っていたのは以下の4点だと言われています。

①現地の人材との円滑なコミュニケーション

②現地の法律と流通に関する下調べ

③現地と日本の文化の違いを理解すること

④味の標準化に関する検討 それぞれについて具体的に考えていきましょう。

現地の人材との円滑なコミュニケーション

まず、1つ目の「現地の人材との円滑なコミュニケーション」についてです。 海外で店舗運営を行う場合、スタッフの選定で躓くことが多々あります。

日本から教育した人材を派遣できれば1番スムーズですが、十分な人数を確保するのは難しく、また言語などの問題もあります。

最終的には現地人のスタッフを雇用することを視野に入れる必要がありますが、宗教や風習の違いでトラブルが起こることも考えられます。

成功店の多くはこの問題を考慮し、現地スタッフと密にコミュニケーションが取れ、接客マナーなどの教育がしっかりできる日本人社員を育てています。

現地の法律と流通に関する下調べ

2つ目は「現地の法律と流通に関する下調べ」です。

国によって法律や流通経路が異なるため、日本で問題なくできていたことができなくなったり、食材をスムーズに調達できなかったりするケースも多々あります。 うっかり違反してしまったり、輸出入の規制に引っかからないためにも、海外進出前に現地の法律と流通に関する念入りな下調べは必須です。

成功店では現地で働くスタッフとも認識を共有し、トラブルが少なくなるよう心がけています。

現地と日本の文化の違いを理解すること

3つ目は「現地と日本の文化の違いを理解すること」です。

特定の宗教が強く信仰されている地域などでは、「宗教上、または風習の問題で食べられない食材」が複数あるケースが見受けられます。

もし禁止されている食材を使ってしまった場合、現地でのイメージダウンは避けられません。

成功店の多くは、法律や流通と同じく現地の文化をしっかり理解し、土地に合わせた店舗運営やメニュー設定をしています。

味の現地化と標準化に関する検討

最後は「味の現地化と標準化に関する検討」です。

日本のナポリタンがイタリアにはなく、アメリカではカリフォルニアロールが人気なように、料理は輸入される際、「その国に受け入れやすいスタイルや味に変化する」ことがほとんどです。 そのため、海外進出する際、料理の味を「現地に寄せるか」、「日本と全く同じにするか」は悩みどころです。

成功店の中でも「ほぼ変えていない」ところもあれば、「原型を留めないほど変えているところ」や、「メインメニューは変えないがサイドメニューは現地に合わせている」など、さまざまです。

最初から「こうする」と決めつけず、現地の方の反応や売上を見ながらフレキシブルに調整する覚悟を持つことが成功の秘訣かもしれません。

海外に出店した日本の飲食店の代表的な成功事例

海外に出店した日本の飲食店で、見事現地の人々に受け入れられた事例にはどのようなものがあるのでしょうか?

最も有名なのは、1975年、いち早く海外に乗り出した「吉野家」です。日本では牛丼で有名な吉野家ですが、牛丼に固執することなく、徹底して現地の文化を取り入れることで成功を収めました。

例えばムスリムが多いマレーシアの店舗では、イスラム教の戒律にのっとって調理されていることを証明するため、ハラル認証機関から認証を得ています。 その他、「現地で理解してもらいやすいメニュー名を考案する」、「現地で愛されている食材を使った新しい丼メニューを開発する」など、積極的に現地化することで売上を伸ばしています。

対して和食で知られている「大戸屋」は、徹底的に日本での味を守り抜いて成功しています。「ここでしか味わえない日本オリジナルの味」を打ち出し、ブランド化に成功。主にアジア圏で急成長を遂げています。

「大戸屋」は日本では「手軽に食べられるおふくろの味」ですが、海外では「本格派の高級日本食」として戦略的に売り出している点も特徴です。

円安・ドル高の影響は?日本の飲食店の現状

海外で展開している日本の飲食店の中でも、アメリカに進出している店には今、大きな試練が訪れていると言えます。

アメリカでは現在インフレが進んでおり、消費者物価指数が前年比で10%近く上昇するという驚異的な状況に陥っています。

当然、飲食店での値上がりも激化。 例えば、ニューヨークの高級寿司店ではコース料金が100ドル~150ドルほど値上がりしました。

日常的に飲むジュースなどが短期間で2倍近くの値段に跳ねあがっているケースもあるためこの値上げもわからなくはないですが、100ドルと言えば14,000円~15,000円(2022年11月現在)です。コース料金がいきなり15,000円もアップしてしまうことは日本では考えられないでしょう。

アメリカに進出している日本の飲食店はこのインフレの対応に追われています。

合わせて、これは主に日本からの旅行客への影響が大きいと言えますが、円安・ドル高の影響も顕著です。

アメリカでも大人気の日本食「ラーメン」の現在の平均的な値段はシンプルなもので15~20ドル。アメリカにはチップ文化があるため、チップと税金も含めると、さらに5ドル程度値上がりします。

例えば20ドルのラーメンにプラス5ドルで25ドルだと、2022年11月現在の日本円では3,600円前後!

3,600円と言えば、日本では豪華なランチコースやちょっとリッチな焼肉食べ放題の料金です。

ポイントを押さえ、海外での出店も視野に

今回は「海外で展開している日本の飲食店」について、インフレや円安・ドル高の影響も踏まえて取り上げました。

日本の人口減少を考えると、海外進出は大きなチャンスです。

海外の政治や経済の動向は日々刻々と変化しているため、これからもその動向から目が離せません。

 

 

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