なぜ介護業界で人手不足が起きているのか?介護施設の現状と原因、解決方法を紹介!
介護業界では高齢化社会の進行とともに人手不足が深刻化しています。
しかし、人手不足問題は高齢化社会だけが引き起こしていません。
なぜこの問題が深刻化しているのか、その原因や解決方法をさまざまな観点から紹介しています。
・介護業界で働いている人
・人手不足問題を解決したい人
・介護業界の現状を知りたい人
介護業界に関わる人にピッタリな内容となっているので、ぜひ最後まで読み進めてくださいね。
介護業界における人手不足の現状
公益財団法人介護労働安定センターが行った令和3年度介護労働実態調査によると、介護事業所全体において、63%もの施設が人手不足を感じているという結果がありました。
今介護業界では何が起きているのでしょうか。
介護を行う家庭が少なくなっている
介護者が増える一方、家族間で介護を行うことも少なくなっています。従来であれば親の介護を子どもが行う家庭も少なくなかったですが、親と離れて暮らす家庭や夫婦共働きの家庭、ライフスタイルの変化などによって介護が行えない家庭が増加しています。
このことによって利用希望者が増え、施設の限界を超えるといった問題が発生しています。
要介護者は今後増加する見込み
内閣府が調査した「令和3年度高齢社会白書」によると、日本の総人口に対する高齢者の割合は28.8%となっており、65歳以上の方は3,619万人でした。
その中で前期高齢者である74歳までは1,747万人、75歳以上の後期高齢者は1,872万人もおり、後期高齢者の方が多いことがわかりました。
参考:令和3年版高齢社会白書
日本の人口は2010年をピークに減り続けていますが、高齢者は年々増加傾向にあります。
今後少子高齢化が進むことで、人材の確保がままならない中、介護を必要とする高齢者が増えていくことは間違いないでしょう。
なぜ介護業界で人手不足が起きるのか
介護業界で人手不足が起きている原因は主に下記の3つです。
・採用難である
・離職率が高い
・給料が安い
それぞれ詳しく解説していきましょう。
採用難である
1つ目は採用が難しいことです。難しくなってしまった主な要因は、同じように人手を欲している施設が多くあるためです。
また、人手不足は介護業界だけではありません。最近の労働市場は売り手市場であるため、他の業界や条件のいい企業に人が流れていってしまうことも採用難に拍車をかけています。
離職率が高い
離職率が高いことも人手不足の要因になっています。介護職員の離職率は14.3%と年々少しずつ低下していますが、それでも人手が減ることは決していいことではありません。
仕事を辞める要因となっているのが人間関係です。
介護職員は同僚だけでなく、医療関係者や介護対象者など、さまざまな人と接する仕事です。それだけの人とうまく関係を築くのは簡単ではありません。また、介護職員はその中でも地位が高い立場ではなく、どちらかというと低い方です。
人によっては言葉遣いが荒い人、理不尽な要求を言う人、冷たい態度をとる人もいます。そういった中で仕事を続けていくのが辛くなり、辞めていく人は少なくありません。
給料が安い
公益財団法人介護労働安定センターが行った令和3年度介護労働実態調査によると、介護労働者の平均賃金は約24.4万円でした。これは全産業の平均賃金よりも少ない結果です。
介護職員は夜勤があったり、土日祝関係なく勤務したり、肉体労働があったりと身体的にも精神的にも負担の大きな仕事です。
その仕事内容に対して給料が見合わないと感じやすいため、人材が流出するほか、人が集まりにくくなっています。
介護業界の人手不足を解決するには?
さまざまな理由から人手不足になってしまった介護業界。今後さらに人手が必要になってくる可能性があるため、今のうちから対策しておくことが重要になります。
ここで人手不足を解消するための策をいくつか紹介します。
待遇の改善
1つ目は従業員の待遇面を改善することです。これは人集めだけでなく、人材の流出を防ぐ効果もあります。
世間的に介護職員の待遇面があまり良くないというイメージはTVなどを通じて知られています。そのため、介護職員に挑戦したくても足を踏み入れることに躊躇してしまう人がいるはずです。
そこで待遇面を改善することで働き手が増える可能性が生まれます。コスト的に給与が厳しいというところは福利厚生を充実させることでも求人が集まる可能性は上がります。
外国人労働者を受け入れる
最近介護業界に外国人就業者を入れている介護施設が出てきています。公益財団法人介護労働安定センターが行った令和3年度介護労働実態調査によると、外国籍労働者を受け入れている事業所は6.2%とまだまだ少ないですが、今後活用していく予定があると答えた事業所は11.7%もありました。
外国人を雇用するのは言語や文化の問題はもちろん、VISAの関係や手続きに手間がかかるため、受け入れるのは容易ではありませんが、若者を雇用しやすいため、人手不足解消のカギとなる可能性はあります。
年齢枠をひろげる
現在65歳以上の方を雇用している事業所が7割弱あります。特に介護職員として勤務している方が多く、短時間勤務での雇用契約を行っています。
仕事内容での改善から人手不足
仕事のやり方を変えることで人手不足解消にも繋がります。具体的にどうすればいいのか紹介していきましょう。
デジタル化の導入
これまで事務作業がアナログであったため、業務に手間取り、職員の大きな負担となっていました。余計な手間暇が生まれると、本来の業務である介護サービスがおろそかになってしまう要因になります。
しかし、この問題はデジタル技術によって解決していきます。
例えばスマホやタブレットを使用し、利用者さんの記録を入力できるシステムを使えば、いちいちメモをして後でPCに入力するといった手間がなくなります。また、記録の情報共有もできるため、確認作業の手間がなくなるほか、伝達漏れといったミスも軽減されます。
アナログからデジタルへの変更は、最初は戸惑いますが、将来性を考えると必要な投資でしょう。
使い捨て容器の導入
使い捨て容器の導入も人手不足解消につながります。介護施設では、食器からコップまで日々洗うものがたくさん出てきます。さらに今はコロナ禍ということもあり、毎回洗浄後に消毒作業も徹底して行わなければなりません。
介護作業や事務作業の合間に洗浄作業をしているところもあるため、食器洗浄機や乾燥機を導入する方法もありますが、もっと手軽な方法として使い捨て容器の導入がおすすめです。
特にコップは1日に何回も使うため、紙コップを導入するだけでも大きな負担軽減になります。
介護職員の処遇が改善されてきている
介護業界においては、人材不足や低賃金の問題が続いていたこともあり、国を挙げて介護職員の処遇の改善を進められています。
2019年10月から介護経験がある人や技能を持つ方に対して、手当をつけるなどといった方法で給料をあげる取り組みを行っています。
これによって、介護職員の中で主任クラスのようなリーダー級の方は一般企業で働く人と同等かそれ以上の給料がもらえるようになっています。
待遇をよくしていくことによって、介護業界=給料が安いというイメージを払拭できるかもしれません。
介護業界の未来は決して暗くない
高齢化社会の深刻化は以前から問題視していたこともあり、国を挙げて改善に取り組んでいます。育児や介護休業法が改正されたことで、今後子育て家庭や介護を行っている家庭の方も介護業界で働きやすい環境になってきました。
介護施設としては国に頼るのではなく、さまざまな面から改善をはかることで人員不足問題も解消していくことは十分に可能です。
今回紹介したように、求人方法を変えるほか、IT化や使い捨て容器の導入など今すぐにでもできることはあります。
早急に取り組んでいき、人員不足の危機を乗り越えていきましょう!