飲食店やカフェを全面禁煙化することで得られるメリットやデメリットとは?
2020年の4月に施行された改正健康増進法によって、飲食店は原則屋内禁煙となりました。
開店日や店舗規模によっては喫煙できますが、今度改正によって喫煙できなくなる可能性はあります。
飲食店やカフェの中には将来を見越して店内を全面禁煙化にしたところも少なくありません。
しかし、飲食店オーナーにとって、店内を全面禁煙化にするのは不安があると思います。
ここでは店内を全面禁煙化したことによって得られたメリットやデメリットを紹介しています。
店舗を運営している方やこれからお店を開店する方はぜひ参考にしてください。
飲食店やカフェを全面禁煙にするメリット
店内を全面禁煙したことでどんなメリットが生まれるのか、代表的なものを3つ紹介していきましょう。
女性客やファミリー層が増える
1つ目は女性客やファミリー層のお客様が増えることです。
国立がん研究所が調査した全国の成人喫煙率によると、男性が27.1%、女性が7.6%でした。
出典:喫煙率|がん情報サービス
これによって喫煙者は男性の方が3倍以上多くいることが分かります。
女性や子どものいるファミリーはタバコを避けたいという傾向があります。喫煙できるお店の場合、行きたいと思っていても諦めていたかもしれません。
しかし、全面禁煙となったことで女性やファミリーといった新規顧客の獲得につながるでしょう。
食事の味を楽しんでもらうことができる
非喫煙者であればどんな素晴らしい料理に囲まれていても隣でタバコを吸われていると、臭いが気になり料理の味が楽しめないという経験があると思います。
非喫煙者は特にタバコの臭いに敏感です。少しの臭いだけでも反応してしまい、食事に集中できなくなってしまいます。
完全に禁煙化することで、タバコの臭いを気にすることなく、自分たちの料理の味を楽しんでもらえるようになるでしょう。
お店の回転率が早くなる
喫煙者はタバコを吸いながら料理やお酒を飲むため、非喫煙者と比較するとお店の滞在時間が長い傾向があります。
喫煙者の中には食後にタバコを楽しむ人もいるので、そうなると回転率が悪くなってしまいます。
飲食店やカフェを全面禁煙にするデメリット
上記では店内を禁煙化することで良かったことを紹介してきました。新規顧客の獲得やお客様の満足度が上がる一方、悪かった点もあります。
客単価が下がる
喫煙者と非喫煙者を比較した際、喫煙者の方が一回の食事で支払う金額が多い傾向にあります。
FNNプライムオンラインが発表したデータによると、1回の食事で5,000円以上支払う割合は喫煙者が31.5%、非喫煙者は17.3%と倍近くの差がありました。
出典:喫煙者の方が外食頻度も支出金額も多い“重要なお客様”!?飲食店に求められる対応を聞いた|FNNプライムオンライン
この理由としては、喫煙者はタバコと一緒にお酒を楽しむ傾向があるためと考えられます。お酒とタバコの相性はよく、さらに料理も一緒に注文するので食事代が上がるのでしょう。
また、同調査では喫煙者の方が食事に行く頻度が多いことや、グループで食事に行く傾向があるとも発表されています。
喫煙者が入店できなくなると、機会損失を生み出してしまうかもしれません。
男性客を主体としているお店の場合は対策をしなければいけない
焼鳥屋やバーのような男性がふらっと立ち寄るようなお店の場合、顧客離れが起きる可能性があります。
男性喫煙者の年齢層を見ると、30~50代が最も喫煙率が高い世代です。その世代は1人や会社の同僚と飲みに行く機会が多いため、お店によってはメインターゲットとしています。
しかし、完全禁煙にしてしまうと、そのメインターゲットを変更するか、何かしらの対策を設けないといけません。
例えば、外にタバコを吸うスペースを作る、分煙室を作るなどといった方法がベターでしょう。
禁煙化対応にコストがかかる
お店を全面禁煙にする際には、コストがかかってしまいます。これまで喫煙可能にしていた場合、臭いを完全に取り除く必要があります。
消臭やヤニのついた壁の掃除、ひどい場合はクロスの張替えなど工事が必要になることも。
臭いが残ったまま営業してしまうと、禁煙者からタバコの臭いがするとクレームが来る可能性があり、全面禁煙した意味がなくなるかもしれません。
禁煙化はお店の売上減少になる?
上記で禁煙化によって客単価が下がる可能性があることについて紹介しました。一方でファミリー層や女性客の流入が増える可能性もあります。
お店側としては禁煙化によって一番気になるのは売上の推移でしょう。
実際のところ売上はどうなるのか、飲食店の情報を加えながら紹介していきます。
お好み焼き「千房」では売上が4.9万円増加
飲食店ドットコムジャーナルの取材によると、大阪のお好み焼き専門店「千房」グループは全店舗で禁煙化したところ、1日あたりの売上が平均4.9万円増加したそうです。
特に高級路線の店舗において売上が増加したようで、理由としてはタバコの煙を気にせずにゆっくりと食事を楽しめる環境になったことで注文数が伸びたからと予想されています。
参考:飲食店3店舗が語る“禁煙化”がもたらす長期的なメリット。売上アップに成功の店舗も!|飲食店ドットコムジャーナル
全国の飲食店の約半数は「売上に変化なし」という返答
クックビズが「飲食店の禁煙化に関する調査」を行ったところ、60%ものお店が売上に変化はありませんでした。
また、12%が売上増加、28%が売上減少という結果となりました。
売上が増えた理由としては、「回転率が上がった」「店内の空席率が下がった」ことがあげられています。
一方、売上が下がった要因は「非喫煙者はお酒を飲まないので単価が下がった」「ビジネス客が減った」とされています。
ただし、売上減少は一時的であるという意見もあったそうです。
売上が変わらない店舗でも「ファミリー層や女性客が増えた」「(掃除にかかる)経費が減った」「店内の飲食環境が改善された」など、ポジティブな意見が多数寄せられたそうです。
参考:禁煙化実施の都内飲食店60%は「売上に変化なし」。5割が全面禁煙化に賛成との結果に。|AMP News
全面禁煙化をする際の注意点
店内を完全に禁煙化する際に注意しておくべき点は以下の2つです。
・メニューの変更を検討する
・従業員の理解を得ておく
これらについて詳しく解説していきましょう。
メニューの変更を検討しておく
ここまで読み進めてきたことで、全面禁煙化によって客層が変わっていくことが分かっていただけたかと思います。
ファミリー層や女性客が増えると予想されるため、これまでと同じメニューでいいかどうかはしっかり検討していった方がいいでしょう。
お酒で売上を確保していた店舗の単価は下がる可能性があります。フードメニューを充実させる、女性やファミリーにうけるものを考案するなど対策を考えていきましょう。
従業員の理解を得ておく
もう一つの注意点は従業員の理解です。
店内を全面禁煙化する際に従業員から反発があったという飲食店は少なくありません。
「これまでの常連さんがいなくなってしまう」「売上が下がるんじゃないか」などという声は上がってくるでしょう。
そういった意見が出てきた際は、全面禁煙化によるメリットを述べる、売上予測を見せるなど、きっちり話し合って理解してもらうことが重要です。
全面禁煙化を行う前にきっちり準備しよう
お店を全面禁煙化するのは勇気がいると思います。「これまでの常連さんがいなくなるのではないか」「売上が下がるのではないか」などネガティブなイメージばかりが出てきてしまうのは仕方ないでしょう。
確かに一時的には売上は下がるかもしれません。しかし、長期的に見ると客層が増え、売上が伸びる可能性は十分にあります。
重要なことは事前準備を怠らないことです。いろんな打ち手を考えつつ、全面禁煙化を進めていきましょう。