セントラルキッチンとは?歴史や仕組み、導入のメリット・デメリットまで解説
ファミリーレストランなどでよく名前の上がる「セントラルキッチン」。具体的にはどのような施設なのでしょうか?今回はセントラルキッチンの概要や歴史、仕組みから、導入にあたってのメリット・デメリットまで包括的に解説します。
セントラルキッチンの歴史と仕組み
セントラルキッチンとは、料理の調理工程を1ヶ所にまとめ効率化をはかる施設のことです。日本語では「集中調理施設」とも呼ばれており、ファミリーレストランを始めとする多くの飲食店で導入されています。給食室で給食を作らずに給食センターから配送してもらっている学校がありますが、あの給食センターはまさにセントラルキッチンです。まず、セントラルキッチンの歴史や仕組みについて見ていきましょう。
セントラルキッチンの歴史
日本におけるセントラルキッチンの歴史は1960年代に遡ります。現在「ロイヤルホスト」や「シズラー」「てんや」などで知られるロイヤルホールディングス株式会社が、1962年、日本で初めてセントラルキッチンを導入しました。
セントラルキッチンの存在を一躍有名にしたのが1970年の大阪万博です。大阪万博でロイヤルホールディングス株式会社が運営したカフェテリア形式のレストランには、福岡のセントラルキッチンで加工した食材が使われていました。1からすべて会場で調理するのではなく、加工した状態で食材を会場に運び込むことで、1日5,000食もの料理を提供することに成功。その功績は日本中で大きな話題となり、その後日本国内に増えたファミリーレストランなどで同様のシステムが活用されることとなります。
セントラルキッチンの仕組み
セントラルキッチンで食材を加工してから、飲食店でお客様に提供するまでの流れは次の通りです。
- セントラルキッチンで食材を加工
- 保存(冷凍など)
- 配送
- 飲食店で再加熱
どの程度までセントラルキッチンで食材を加工するかは企業によって異なります。例えば、前項で登場したロイヤルホールディングス株式会社の運営する「ロイヤルホスト」では、セントラルキッチンを活用しつつ、店舗での調理方法にもこだわることで他店との差別化をはかっています。
また、加工後の配送も「調理後そのまま運ぶ」「調理後、急速冷凍する」「調理後、チルド常態にする」などさまざまな方法がとられています。
セントラルキッチン導入のメリット
飲食店オーナーがセントラルキッチンを導入するメリットは主に次の6つです。
- 提供する料理の品質が一定に保たれる
- 店舗の調理設備を簡略化できる
- 人件費が削減できる
- 衛生面での管理が簡単になる
- 調理担当スタッフの育成が容易になる
- 企業秘密を守りやすくなる
それぞれについて詳細を説明します。
提供する料理の品質が一定に保たれる
セントラルキッチンを導入することで、すべての店舗の料理を同じ条件で調理することが可能になります。そのため、各店舗の調理スタッフのレベルにとらわれず、安定した品質の料理を提供できるのです。これによりお客様に「どこの店舗で食べても同じ味でおいしい」という安心感を抱いていただくことができます。
店舗の調理設備を簡略化できる
セントラルキッチンを利用することで、各店舗の調理スペースを簡略化することが可能です。これにより狭い場所にも店舗を出店しやすくなります。セントラルキッチンには大型の調理設備や大量の食材を保管する冷蔵庫などが必要になるため、初期投資は大きくなりますが、店舗でのコスト削減が見込めるため、トータルで考えれば十分なメリットをもたらすと言えるでしょう。
人件費が削減できる
セントラルキッチンに調理工程を集中させることで、店舗では簡単な再加熱や盛り付けだけを行えば良い状態になります。それにより店舗の調理スタッフを減らせます。また、セントラルキッチンでは何店舗分もの料理をまとめて効率的に調理するため、その点においても人件費の削減が可能です。
衛生面での管理が簡単になる
飲食店において衛生管理を徹底するためには、調理環境や調理器具、食材の管理など、すべてに気を配る必要があります。セントラルキッチンでは1ヶ所で全ての調理が行われるため、まとめて衛生管理ができ、一層効率的になります。衛生管理の徹底は、お客様に安心感を与え、お店を信頼していただく重要な要素となります。
調理担当スタッフの育成が容易になる
店舗での調理を簡略化することで、高度なスキルを持った調理人が不要になり、それによりスタッフの育成が容易になります。また、調理手順のマニュアル化なども進むので、スタッフの教育コストを削減しつつ、高いクオリティの料理を提供できるようになります。
企業秘密を守りやすくなる
調理工程を1ヶ所に集中させることで、今までなら各店舗の調理スタッフなどから自然と流出してしまっていた「味つけのポイント」などの企業秘密を守ることが簡単になります。飲食店においては難しかった情報管理も、セントラルキッチンの導入により実現可能になるのです。
セントラルキッチン導入のデメリット
多数のメリットがあるセントラルキッチンですが、次のようにいくつかのデメリットも存在します。
- 味や鮮度が落ちやすい
- 莫大な初期費用がかかる
- お客様の声を吸い上げにくくなる
- 店舗スタッフの商品知識が深まらない
- 一定の稼働率がないと運営できない
- 食品ロスが起こりやすい
それぞれについて詳細を説明します。
味や鮮度が落ちやすい
セントラルキッチンでは、大量の食材を1ヶ所で調理し、各店舗に配送しますが、この過程で、食材の鮮度維持や品質管理が難しくなります。また、調理後の食材や料理を適切な温度で保つことが重要ですが、温度管理が複雑なため、どうしても作ってすぐ提供するよりは味や鮮度が落ちやすいという問題が生じます。
莫大な初期費用がかかる
セントラルキッチンを導入するには、大型の調理設備の導入や施設の建設など、大きな初期投資が必要となります。特に、衛生管理基準を満たすための設備やシステムを導入するための費用は高くなることが多い点が特徴。したがって、この初期投資が回収できるほどの規模が確保できない場合、赤字になることもあります。
お客様の声を吸い上げにくくなる
アットホームな個人の飲食店と比べて、セントラルキッチンを導入している店舗では直接お客様からのご意見をいただく機会が減ります。その結果、お客様のニーズへの迅速な対応が難しくなり、サービスの質が落ちる場合があります。
店舗スタッフの商品知識が深まらない
セントラルキッチンでは、重要な調理工程は1ヶ所に集中しており、各店舗では仕上げをして提供するだけです。このため、各店舗のスタッフが食材や料理の作り方について十分に理解する機会が減り、商品知識が深まりにくいという問題が生じます。
<一定の稼働率がないと運営できない
セントラルキッチンを効率的に運用するには、一定の稼働率が必要です。したがって、十分な需要が確保できない場合、運用コストを回収することができなくなる可能性があります。
食品ロスが起こりやすい
セントラルキッチンは1度に大量調理することを前提としているため、多量の食材をまとめて処理します。しかしニーズの予測がずれてしまった場合など、計画的な運用が難しい状況下ではロスが発生しやすいと言えます。
自店に最適なシステムの検討を
多くのメリットがありつつも、導入するにあたってはハードルがやや高いと言えるセントラルキッチン。可能性を試すためにも、食材を厳選し仕込み作業だけ行ってみるなど、小さなところから少しずつチャレンジすることが大切です。ぜひこの機会に、自店に最適なシステムを改めて検討してみてはいかがでしょうか?
2 コメント
同じような解説はネットで山のようにありますが
当解説は、業界の仕組み仕掛けの解説がわかりやすかったです
ありがとうございます🙇♂️
とてもわかりやすい解説でした。
セントラルキッチンが最近流行りなのでなんとなくは、わかっていたつもりでしたがこの解説のお陰でよく理解が出来ました。ありがとうございます